【頭の形外来】赤ちゃんの頭の形がゆがんでいるけど大丈夫?
- 2023年11月17日
- 専門外来(アレルギー、おねしょなど)
頭の形のゆがみが強いと、将来、合う帽子がない、嚙み合わせが悪い、眼鏡がずれやすくなるなどの困り感が出ることがあります。頭痛や肩こりの原因となることも知られています。
<頭の形のゆがみの原因>
ほとんどは【寝ぐせ(向き癖)】です。
赤ちゃんの頭の骨(頭蓋骨)は一つの骨としてではなく、複数のパーツに分かれています。これは赤ちゃんの脳は2-3歳ごろまで急速に成長するためです。頭蓋骨が癒合していないため、外圧によって容易に変形が生じます。
つまり、同じ側に向いて寝ることで接地面の成長が抑えられ、変形が生じてきます。
<変形のパターン>
斜頭:左右のゆがみがあり、頭を上から見ると平行四辺形に見えたり、耳の位置がずれて見えることがあります。向き癖がある赤ちゃんによく見られます。
短頭:絶壁頭と表現されます。仰向け寝の時間が長い赤ちゃんによく見られます。
★耳の位置に注意!★
両耳の位置が前後にずれていると、頭のゆがみが中等度以上である可能性があります。
※頭蓋骨の成長の85%が生後1年以内に完了すると言われています。早期発見と治療がとても大切です。
<予防方法>
生後1-2か月ごろまでは、赤ちゃんはあまり自分から頭を動かさず、寝ているときは同じ姿勢をとりやすいです。
1日10時間以上は寝ている体勢であるため、「よく寝る子」であっても、意識して抱っこしたり頭の向きを変えるようにして、頭の同じ部分にかかる重力から解放してあげることが重要です。
生後1-2か月児にドーナツ枕を使用すると、顎が胸に押し付けられるような体勢となり、気道閉塞のリスクになります。使用する際は対象年齢のチェック、お子さんが苦しそうな体勢とならないか注意が必要です。
★タミータイム(うつ伏せで遊ぶ時間)★
お子さんが首がすわって寝返りするようになってきたら、起きている時間、保護者の観察下でお子さんをうつ伏せにして過ごす時間を作るようにしましょう。
はじめは1日2-3回、1回5分程度からはじめ、徐々に延長して1日30-60分程度過ごせるとよいです。お父さんとお母さんも一緒になって横になり、お子さんと同じ目線になるようにして遊んでみてください。
頭を持ち上げられない時期は、お父さんやお母さんの胸の上でうつ伏せの姿勢をとると安心です。
<ヘルメット治療>
赤ちゃんのうちは頭の骨が柔らかく、頭の形のゆがみ(絶壁)が強い場合には、生後5-6か月ごろまでにヘルメット治療を開始することで改善が期待できることが知られています。
変形が強いお子さんでは生後3-4か月ごろに治療を始めると効果的です。一方、治療開始時期が生後9か月以降では治療効果が低下すると言われています。
ヘルメットは1日22-23時間装着するようにします。治療期間は、早めに治療を開始されたお子さんでは3-4か月程度、長くて6か月程度です。
当院では、ベビーバンド(株式会社Berry)というヘルメット治療を行っています。自費(ヘルメット作成35万円(税別))となります。
【公式】ベビーバンド 赤ちゃんの頭の形を治療する頭蓋形状矯正ヘルメット (babyband.jp)
<診療の流れ>
当院では、まず「クラニオメーター」という器具を使って、赤ちゃんの頭の形のゆがみの程度を確認します。また、頭囲の計測、触診など一般的な成長発達のご様子を確認します。
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程度に応じて生活指導、ヘルメット治療をご案内します(ヘルメット治療の適応は、月齢だけでは判断できないため、診察の上で総合的に判断してご提案しています)。
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1か月ごとに外来で経過観察し、ゆがみの程度の改善具合を確認していきます
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ヘルメット治療を行う場合には、専用カメラでお子さんの頭を前後左右から撮影し、お子さんの頭に合わせたヘルメットを作成します(作成まで約2週間ぐらいかかります)。ヘルメットを装着することで、ゆがみ部分に空間を作り成長を促します。
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治療開始後は1か月ごとに専用カメラで頭の形を撮影し、専用アプリを通して改善していくご様子をご家族と一緒に確認していきます。
頭のゆがみについては、診断や治療についての手引きはなく、受診される医療機関によっては、「とくに治療の必要はない」と言われることもあるかと思います。
ご家族が、お子さんの頭のゆがみについてご心配があれば、生後6か月までを目安に、早めに一度ご確認ください。治療の判断だけでなく、予防法のアドバイスも行います。
川崎市以外の方(横浜市、東京都内の方でも結構です)もご相談を受けします。
【頭の形外来 担当医師】
院長(久保田亘):月・火・木・金・土
樋口アカリ:月・火・水・土
【参考】
「小児の頭蓋健診・治療ハンドブック 赤ちゃんの頭のかたちの診かた」
日本頭蓋健診治療研究会 編著